会員がつづる雅楽つれづれ
すぐ鳴るリードください!

「天理の話題」で既報のように、今月9日、10日の2日間、天理教音楽研究会雅楽部主催「篳篥リード作製講習会」が行われました。私はその講師を勤めさせていただきました。
 この講習会は、今回で2回目になります。期間は2日間、受講生は全員で7人(男6人・女1人)でした。まずは講習会の内容と様子についてご報告します。
 講習内容は、次の通りです。
 第1段階は、材料取りの工程。
 第2段階は、下準備(葦の皮むきと和紙巻きなど、その後葦を火であぶり・ひしぎなど)。
 第3段階は、ひしいだ葦を削りあげる・責めを作るなど。
 第4段階は、出来上がったリードを鳴るように調節する・帽子を作る。
 初日は、第1、2段階を、二日目は、第3,4段階を行いました。



 今回は講習受講の条件を、「平調奏楽のできる人」としました。まったくの初心者がいなかったので、それぞれの段階を比較的スムーズに行うことができました。
 まず、第1段階では、産出地による葦の違いを、淀川の葦と琵琶湖の葦を例に説明、実際にその2種類から材料取りをしました。
 第2段階は、淀川と琵琶湖の2種類の葦の皮むきをしました。皮のみを削る作業なのですが、受講生がそれぞれ持参された切り出し小刀の切れが悪く、失敗を繰り返しながら、なんとかひしぎのできる葦を作りました。
 次はカセットコンロでひしぎコテをあぶって熱し、葦を水に通して、いよいよひしぎの開始です。コテを回転させながら全体に熱を加えていくと、水気の蒸発とともに葦自体が自然に柔らかくなり、コテに力を加えることなくゆっくりとコテ先が閉じていきます。
 実際、受講生の方々は、初めてにしてはうまく作業を進めました。淀川と琵琶湖とでは材質が少し違うのですが、さらにひしぎを繰り返して、その違いが実感できたようです。ここで、初日は終了しました。



 二日目は、第三段階の「葦の削り」からでした。まずは切れ味の悪い小刀のを研ぎから始めました。深くナイフが入りすぎたり、削りすぎたりと、様々なトラブルと格闘しながらも、それぞれなんとか1、2本のリードを仕上げました。
 続いて、責め作り。まず、籐を適当な長さに切り、4つ割りにして責めの太さに削ります。それから、リードの長さに合わせて切り、赤の絹糸で止めます。よい責めを作るには経験と演奏技術が必要です。みなさん、戸惑っておられましたが、最終的に何人かは責めを作れるようになりました。
 第四段階は出来上がったリードに和紙を巻き、試し吹きをしながら調節をします。紙巻きまではそれぞれやっていただいて、調節は私が行いました。調節が出来るようになるには、たくさんのリード作りの経験と演奏技術の両面 が必要です。
 ちなみに市販しているリードは、ほとんどがこの工程をしていないのが多いです。ですから、鳴らないのは当たり前です。それをしない原因はいろいろあるでしょうが、試し吹きをすると多くの場合、リードをだめにしてしまうか・リードを汚してしまうのか、あるいは製作者自身に試し吹きできる技量 がないのか、その辺りは私にはわかりません。
 最後に、檜で帽子作りです。これは工程の説明をした後、事前に用意しておいた帽子を配りました。この作業も道具と技術が必要ですから、説明のみにしました。
 受講生の皆さんには、一生懸命それぞれの工程に取り組んでいただきました。なんとか全員、音の出せるリードが完成、今まで知らなかった世界を少し垣間見ることができたようです。



 さて、ここでリード作りに対する私の思いに少しお付き合いください。
 篳篥は楽器もさることながら、リードが命です。息の入る・保てる、大きな音の出るリードを作るために、吹き込みながら、手間をかけ時間を費やしてこまめに仕上げていくことが、篳篥吹きの演奏以外の陰の努力なのです。
 よく、「すぐ鳴るリードを下さい」と言われるのですが、心の中で「そんなもんあるか」と思いながら、「すぐ鳴るリードはありますよ。よく鳴るリードはないですよ」と答えています。
 篳篥のリードは、篳篥吹きの陰の努力によってできているということを、篳篥をこれから習う方にも、習いはじめている方にも知っていただきたいのです。
「すぐ鳴るリード」は、すぐに音が出て簡単に調節できて手っ取り早く使えるものです。しかし反面 、材質が柔らかいので長持ちせず、音量が出ないという欠点があります。ですから、演奏するたびに何度も作らなければならないという根気が必要のです。
 それとは反対に「よく鳴るリード」とは、材質が堅く、それを使いこなせるまで時間をかけて吹き込みながら柔らかくしたものを言います。責めが止まる腰がしっかりしていますから、長持ちして管絃から催馬楽まで長く吹いていけるわけです。これを作ることができるのも、篳篥吹きの技量 そのものと言えます。
「すぐ鳴るリード」も「よく鳴るリード」のどちらも篳篥の音という次元では、何の変わりもありません。しかし、演奏の際の音量 ・塩梅の動きという点では大きな違いが生まれます。私が弟子入りしている時、師匠から「始めは、管絃。続いて、舞楽。次に高麗楽。次に催馬楽・朗詠。次に神楽歌。最後に自分の弟子に渡せ」とよく言われました。それだけリードは長持ちするということなのです。
 本来、篳篥吹きは、リード作りと演奏技術の習得の両方を、試行錯誤を繰り返しながら勉強していくものなのです。



 とはいえ、最初は自分でリードを作ることはできません。ここで、店などでリードを購入するに当たっての心構えについて少し述べておきます。
 1.購入する前に、自分の篳篥の頭持ちの大きさを知っておく
 リードは太さが微妙に異なっていますので、自分の楽器に合うリードを選ぶことです。目安は、紙を巻いたリードが頭持ちの外を巻いている籐もしくは樺の巻きが三巻きか四巻き辺りに止まるくらいがちょうど良いです。そのあたりであれば、黄鍾の音が適度に抜け、よく出ます。ちょうど、つなぎ合わせてある部分の所あたりです。
 太さは例えば、プラスチックの管なら、外径10.5?から外径12?までいけます。普通 は、10.5?が標準ですが、9.5?から12.5?まで市販しています。長さは5.8センチが普通 です。
 2.色・艶・形について
 イ、色は黄色いクリーム色が良い。葦が良く枯れるとその色になります。艶は目が細かいとつるつるしています。また、内径が黒くないのが良いです。色の黒いものは、葦自体が悪い場合が多いようです。但し、琵琶湖の葦は元々の色が黒いですから、これは例外です。
 ロ、形は腰がしっかりしているものが良いです。手で押さえて柔らかいものは、すぐ鳴るリードです。それは長持ちしませんし、鳴る前につぶれてしまう可能性が高いです。
 3.自分で試し吹きしながら、リードを作り上げる
 市販しているリードが鳴らないのには、いくつかの原因があります。主な原因は先に少し述べましたように、試し吹きをしていないところにある場合です。しかも、鳴らないのではなく、鳴る構造をしていないというのがほとんどです。しかし、なかには鳴るのに近いのもあります。結局は、購入者が試し吹きをしなければならないのです。それを選別 する目を演奏技量を身につけてください。
 4.責めを作り換える
 初めの責めはほとんどが合っていません。鳴らすための責めと、吹き込むための責めは違います。同じ責めでは合いませんので、作り替えるか、以前に良くなっていたリードの責めを代用することです。昔のリードの責めは持管のリードの責めとして大切にしてください。他人に渡しても楽器に合わないのです。
 5.リードを購入したら、熱いお湯につけないこと。試し吹きは長く吹かないこと(一気に吹くと割れる原因になる)。
 お茶に通し、少し吹く。少し削りを入れる(ナイフを入れる時もあるが、葦の目を削る程度の方が多い)。次第に堅さが減り吹き込みやすく変わってきます。時間をかけると堅いリードの開き具合が少しづつ弱くなり、次第に吹き込みやすい柔らかいリードへ変わっていくのです。そんな努力を惜しまず、続けてください。この繰り返しにより、よく鳴るリードができてきます(3カ月から半年くらいの時間必要)。
 また、できれば吹き込み段階の違うリードを何本も準備しておくとよいでしょう。こうしてできたリードは、すぐ鳴るリードとは格段の違いがあります。しかし、その努力が演奏技術のレベルアップにもつながっていくものなのです。
(by きっさん)

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