会員がつづる雅楽つれづれ
篳篥のリードのセメを考える


 今回は、篳篥のリードに付いているセメについて、少し考えてみたいと思います。
 リード自体の削り方や仕上げ方については、一生懸命に取り組み、研究される方が多く見受けられますが、案外、セメは軽視されがちです。
 セメの働きを、まず考えてみたいと思います。最初に、これはあくまでも私の主観であることをお断りしておきます。


【セメの働き】

 セメの働きは、リードの開き加減を調節することにあります。
 A、リードが開くのに対して、閉める役割
 B、リードが閉じているのに対して、開く役割
 リード自体に開閉の加減を自由に調節する機能がないので、その補助として、籐で作ったセメが取り付けられるのです。素材が籐であるところが重要です。籐は水気を含むと柔らかくなり、乾燥すると堅くなります。湿らせてから吹くというリードの使い方に適合しているのです。

 次に、良く聞かれる質問がありますので、それらを並べてみます。
Q1、セメはずっと同じもので吹いていけますか?
A いけません。

Q2、セメの形はどんなのがいいのですか?
A 基本的にはかまぼこ型です。しかし、籐の素材により、幅と厚さは変わりますし、演奏者の好みにより異なってきます。

Q3、セメの閉める強さは、どのくらいですか?
A ひと言で説明はできません。理由はセメの材料の堅さと粘りがそれぞれ異なること、リード自体の堅さと強さが異なること。両者の具合がちょうど良い状態にせねばならないからです。

Q4、セメが止まるように、セメ止めの削りを深く入れたほうがいいです?
A わざわざセメが止まる所に、さらに刃物で止まる所を作るのでしょうか? セメがとまるように削るのでしょうか?
 セメを止めるためのセメ止めの深い削りは必要ないですし、もしそのような作りのリードがあるなら、それは吹込みがなされていない軽い柔らかい材料で作られたリードです。
 すぐに音は出ますが、芯のある大きな音が出ません。また、すぐに壊れます。

Q5、セメの太さは?
A リードの素材と堅さにより異なりますし、籐自体の堅さと粘りによってもいろいろです。

Q6、セメは、リードの回りを取り囲むような形が良いのですか?
A どちらかというと、閉じているリードを開かせるためにこのような形のセメを使う人が多いようです。リード自体が柔らかくなったか、それとも元々柔らかい材料で作られているリードを開こうとするとき、このようなセメを作ります。
もし、堅い材料に取り囲むようなセメが入れてあるとするなら、それはリードとしての形は似ていますが、鳴らせるためのセメを付けてないと考えるべきです。ほとんどが音すら出ません。セメを変えて、吹き込みをすべきです。

 以上、思いつくところを並べてみました。


【リードの吹き込みとセメの関係】

 一つのリードを演奏できる状態にまで仕上げるには、リードが柔らかくなるまで、吹き込まなければなりません。私が考えるには、リードの吹込み期間は、初期・中期・後期と三つの期間に分かれます。その際、セメもそれぞれの期間に適したものが必要になります。つまり、三種類のセメが必要になるということです。

〔初期〕 これは出来たてのリードをお茶に通す時期です。すぐに大きく開きます。ですから、囲み込む形のセメでは、リードの横が割れてしまいますから、少しだけ押さえ込むセメを仮に入れておきます。ほんの少し、削りの手も入れます。
 吹き込みは、篳篥に入れてほんの少し平調か盤渉か黄鐘の音を吹く程度です。長く吹きません。堅い時期に長く吹くと、リードの左右が割れます。

〔中期〕 この時期になりますと、リードをお茶に漬けることで色が変わってきます。少し茶色になります。開き具合も大きくならず、腰が(セメの止まるあたり)一定してきます。今度は吹き込みができるセメに換える時期です。少し押さえ気味のものを使い、楽器に入れて吹き込みをします。今度は、なるべく長く、四小節くらいを吹いていきます。
  同時にメル音がでるかも確かめてみます。メグリの状態はどうかも試してみます。
 徐々に吹く長さを長くしていきます。削りの手も入れます。お茶にも漬けます。

〔後期〕 この時期になると、リードはお茶で真っ茶色に変色します。逆に開き具合が悪いくらいです。いよいよ、演奏用のセメに換えます。最初は、一曲吹けるかどうか分からないくらいですが、何度か吹き込んでいくと、ちょうど良い時期があります。この時は、何度もセメの入れ替えをして、ベストの状態に仕上げます。削りの手は入れずに、ペーパーをかける程度です。

 リード自体の削りもさることながら、セメの入れ替えは重要です。
 私はよく、セメを首に巻くマフラーにたとえます。全部を堅く巻くと苦しくて動かすことすらできません。しかし、リードの左右前と左右後の四点でセメが止まると自由にリード自体が動きます。セメはマフラーのように巻き込むものはリード自体を単に締めているだけで大きな音は出ません。大きな音を自由に出すためには、本当はセメがない方が大きな音がでますが、芯のない音になります。そこで芯のある大きな音を出すためには、セメが必要になるのです。

 市販されているリードは、微調整されていない初期削りしかほどこされていないものです。ですから、微調整は本人が行うことになります。
 制作者にも問題はあります。微調整すらできない人がリードを作製しているという点です。
 また、微調整をするとリードの左右に割れが生まれます。そうすると商品とならないため、微調整をしないということもあるようです。
 それと、すぐ鳴るリードをほしがる人が多いのです。そういう人は、吹き込みのできるリードはもてあまします。
 しかし、リードの削りとセメの作り方を実際に少しでもやってみれば、案外簡単にできると感じるでしょう。それとともに、演奏の技量も上がってくるのです。
(ご意見・ご質問・ご感想はきっさんまで)

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