「納曽利(なそり)」

納曽利
「納曾利」は、「蘭陵王(らんりょうおう)」と番舞(つがいまい)の関係にある舞曲です。
 番舞とは、左方(唐楽)、右方(高麗楽)の舞曲を組み合わせて一番(ひとつがい)にしたものを言います。唐楽の代表選手が「蘭陵王」とすれば、高麗楽の最先鋒にはこの「納曾利」が挙げられるでしょう。(唐楽・高麗楽についてわからない方は「雅楽ってなに?」をご覧ください)

【曲の由来】

「納曾利」は別名を「双龍舞(そうりゅうのまい)」というように、二匹の龍がたわむれ遊んでいる様を舞にしたものといわれています。
 また現在、この曲が一人で舞われるとき「落蹲(らくそん」と呼ばれる場合がありますが、『枕草子』に「らくそんは二人してひざふみてまいたる」と記されていて、一人舞が「落蹲」、二人舞が「納曾利」とも言い切れないようです。

【曲  想】

 高麗笛と篳篥の旋律の絡まり合いも2匹の龍のようです。長身の龍がからまりあっておりなす彩 りを、音を通して感じさせてくれます。
 唐楽の龍笛と篳篥のメロディの組み合わせはある程度パターン化していて変化に乏しいように思えますが、それに比べるとこの曲を含めて高麗楽の場合、高麗笛は篳篥の旋律をただなぞるに止まりません。その絡まりが、唐楽で鳳笙が演じている役割を代替しているようでおもしろいですね。
 初めてこの曲を聴いたときの新鮮な印象をもたらす原因は、この高麗楽特有の旋律の絡みにあるのでは?

【衣 裳】

 「蘭陵王」の装束は、赤中心の色合いでしたが、「納曾利」の装束は紺・緑系です。「蘭陵王」と同様、毛べりの裲襠(りょうとう)をつけます。「蘭陵王」のものは龍の刺繍がほどこされてましたが、「納曾利」の場合は鳥が描かれています。
 緑青色の面には銀色の目、上下二対の牙、金色の髪、髭は逆立ててあり、吊りあごになっています。この面 を装着して、銀色の桴を右手にもって舞います。

【拍子の話】

 高麗小乱声に始まって、「破」で舞台に出る。揚拍子(あげびょうし)。三ノ鼓の合図で「吹き止め」(意調子や小音取の最後のフレーズ)。続いて「急」。唐拍子(からびょうし)。舞人が退場し楽屋に入ったところで三ノ鼓の合図で「吹止め」が奏されて曲が終わります。
 高麗楽には、3通りの拍子があります。「高麗四拍子」、それに上にあげた「揚拍子」「唐拍子」の3つです。ほとんどの曲は「高麗四拍子」です。なかにこの曲を含め「急」で唐拍子が使われるものが何曲かありますが、揚拍子は、現在この曲でしか使われません。
 高麗楽にあっては、この拍子が舞楽全体を支配していると言ってもいいくらい大切な要素になっています。唐楽・左舞の稽古の際には篳篥や龍笛の唱歌を歌いながら舞われますが、高麗楽・右舞の場合は、三ノ鼓のリズムを口ずさみながら、舞の手を覚えます。こんなところにその理由があるのかも知れません。
(by きっさん)
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