「蘇合香(そこう)」

登天楽

【曲の由来】

 この曲は、桓武天皇(かんむてんのう)の延暦年間(782~805)に遣唐舞生・和邇部島継(わにべのしまつぐ)が、わが国に伝えたといわれています。
 その昔、天竺(インド)の阿育王(アショカオウ)が病に倒れて困っている時に、蘇合草という薬草を服して全快。これを徳として自らが楽曲を作り、臣の育竭(いくげ)に舞を作らせたと言われています。現在でも、菖蒲甲(しょうぶかぶと)という蘇合草をかたどった甲をつけて舞います。

【四箇大曲(しかのたいきょく)】

 雅楽の曲は一般に、短い曲は「小曲」、少し長い曲は「中曲」、長い曲は「大曲」と言います。大曲の中でも、特に長い曲と舞があるものが四つあり、それを四箇大曲と言います。蘇合香はそのうちの一つです。
 曲の構成は、現在伝承している舞曲の中でも長く、序・三帖(じょう)・四帖・五帖・破・急の六章からなります。
 ちなみに四箇大曲とは、江戸時代に記された雅楽の書『楽家録』によると「蘇合香」「皇帝(おうだい)」「団乱旋(とらでん)」「春鶯囀(しゅんのうでん)」が挙げられています。このうち、皇帝と団乱旋が絶えたので、「万秋楽(まんじゅうらく)」と「皇じょう(おうじょう)」を加えた4曲が、唐楽の大曲となっています。これらはすべて左方襲装束(さほうかさねしょうぞく)を用い、諸肩袒(もろかたぬぎ)の着装です。

【蘇合草について】

 『広辞苑』(岩波書店)によれば、①マンサク科のフウ(楓)と同属の落葉高木 小アジアの産 高さ約十メートル余 葉は掌状に分裂 花は淡緑色 ②ソゴウコウの樹皮から採取した芳香を有する灰色の半流動性樹脂質 古く沈香に配合して種々の香を作った 香料の配合、塗擦剤などに用いる とあります。
 実際の舞楽では、甲は菖蒲草の形をしており、元々は菖蒲によく似た草ではないかと思われます。

【曲と舞について】

 舞は、左方文舞(ぶんのまい)六人舞で、40分に及びます。この舞も難舞であります。
 序は、無拍節の序吹きで始まり、途中から拍子が付加され、また少し演奏すると七拍子吹きという独特の吹き方になります。序の最後は、最初の序吹きに戻り、序が終わります。
 続く三帖は、最初から拍子がありますが、最後は序の吹き止めになります。
 四帖(ほとんど七拍子吹き)最後は序で吹き止めです。
 五帖(ほとんど七拍子吹き)これも、最後は序にて吹き止めになります。
 続いて、破。そして、急です。
 非常に長く、序吹きが多いですから、舞を合わせるには十分な経験と体力と精神力などが必要です。大変な舞です。
(by きっさん)
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