「登天楽(とうてんらく)」

登天楽
 登天楽をとりあげます。今月開催されます音楽研究会定期演奏会の演目のひとつでもあります。  ところが、この曲の解説をいろいろ調べてみても、名著『雅楽鑑賞』に書かれてある内容以上のものは見あたりませんでした。そこに記されている内容は、以下のようです。  高麗双調(こまそうじょう)の小曲。四拍子、拍子九、新楽。日本で作られた曲らしい。誰の作かは不明。登殿楽とも記されます。右方蛮絵装束(うほうばんえしょうぞく)を着用する四人舞で、子供が舞う童舞(わらべまい)らしいのですが、近来は大人が舞っています。番舞(つがいまい)は「五常楽(ごしょうらく)」。また、「桃李花(とうりか)」の番舞として「皇仁庭(おうにんてい)」またはこの曲「登天楽」があげられています。

【曲について】

 上記のとおり曲の由来などはわかりません。曲名からすると天(超越的な空間?)に登るというような意味か、それとも「殿」の字義からすると、「殿(宮中)に登る」の意かも知れません。 「天」「殿」の両方の字で書き換えられる曲は、ほかにも「越天(殿)楽(えてんらく)」「応天(殿)楽(おうてんらく)」などがあります。その他「天」を含む曲名には、「三壹塩(さんだいえん)」の別 称である「天寿楽(てんじゅらく)・十天楽(じってんらく)・天人楽」などがあります。

【舞楽は何調が多い?】

 唐楽でも各調子に舞楽曲数のバラツキがあります。たとえば,壱越調(いちこつちょう)・太食調(たいしきちょう)に多く、平調(ひょうじょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)など律旋の調は少ないようです。  一方、高麗楽(こまがく)はほとんどが壱越調で、高麗双調には「地久(ちきゅう)」「白濱(ほうひん)」「登天楽」「蘇志摩利(そしまり)」の4曲があるのみ、高麗平調に至っては、「林歌(りんが)」ただ一曲のみです。  こうした各調による曲のバラツキの理由はどこにあるのでしょう。いちばん演奏しやすい、曲が作りやすいのが壱越調・太食調,さらに高麗壱越調だからなのでしょうか。  ついでにもう一つ疑問を。高麗壱越調は平調の音が主音、高麗平調の場合は、下無(しもむ)音が主音になります。高麗双調は当然、黄鐘音が主音なのですが,吹止めは平調音で終わります。これはなぜなんでしょうか。

【曲の構成と舞】

 余談はさておき、本題の登天楽は、曲の構成、舞人の装束、舞ぶりも白濱にたいへんよく似ています。  通常は次のような次第で進められます。  まず、篳篥(ひちりき)・高麗笛(こまぶえ)の主管と打物で、高麗双調の調子が奏されます。  高麗笛が音頭を吹き始めます。  2つ目の拍子から篳篥の主管が加わり、すぐに各助管がつけ、合奏になります(この当曲の最初の部分に序吹〈じょぶき〉が入る場合もありますが、序吹のない方が一般 的なようです)。  舞人が順次登場し、出手(ずるて)を舞った後、次第にリズムにのって演奏、舞が演じられます。  引き続き、舞人は入手(いるて)を舞って退場します。  高麗笛、篳篥、打ち物で吹止めが奏されます。 「ツウロヲル・ウラ引」のフレーズ、黄鐘→鸞鏡(らんけい)→黄鐘,黄鐘→平調という篳篥のメロディーは、初めて聞かれる人にもきっと印象に残ることでしょう。
(by きっさん)
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